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【PFL】RIZIN榊原CEOとPFLデイヴィス会長が会談「一緒に組むなら大晦日」──サウジマネーが格闘技界にもたらすもの

 米国視察から帰国したRIZIN榊原信行CEOが、PFLに買収されたBellatorの今後について「米国以外の大会」として「日本大会の開催」の可能性を語った。また、PFLのドン・デイヴィス会長も、RIZINとの大晦日の共催について語った。

 2023年11月24日(日本時間25日)、米国ワシントンで開催された『PFL 10: 2023 PFL World Championship』では、6階級の2023年王者が誕生。会場に訪れたBellator王者とフェイスオフを行うなど、「チャンピオンvs.チャンピオン」の期待を高めた。
 実は、大会前に、PFLの創業者&共同オーナーのドン・デイヴィスは、買収したBellatorについて、「年間8大会開催で“Bellatorインターナショナル・チャンピオン シリーズ”を開始する。2024年にファンのためのメガイベントである『PFLチャンピオン vs. Bellatorチャンピオン』を開催する」と宣言していた。

 その言葉を受けて、24日の会見後の囲み取材でRIZINの榊原CEOは、「PFLのドン・デイヴィスとも話しているし、どういう形でBellatorの新体制が組まれるか。PFLが買収して年間8大会が(Bellatorとして)行われる。そのうち2大会は北米でやって、ほかは海外でやろうと考えていて、全体をビッグイベントにすると聞いている」と、2024年のBellatorの動向を説明した。
 当然、現時点でのBellatorの年間スケジュールは組まれており、榊原CEOが語る通り、8大会中、PFLも開催する北米での大会開催は限定され、「海外大会」すなわち欧州や中東、そして日本での開催がそこに含まれる。

 榊原CEOは24日の会見後の囲み取材で、「日本で『Bellator vs.RIZIN』なのか、そこにPFLも加わり三つ巴となるのか。PFLとBellatorの互換性をどう共有できるところはするか、どう別々にブランディングするかは、もう少し時間がかかると思う」と、PFL内でのBellatorファイターの起用、Bellator大会での割り振り、そして海外大会での座組みがどうなるかは、流動的だとした。

 米国視察では、ドン・デイヴィス会長と会談を持ったことも明かし、「これからも友好的に向き合うことはできる状況にはある。逆に楽しみが増える。PFLの契約下の選手もひょっとしたらRIZINとの対抗戦に出るかもしれない」と、新たな展開を前向きにとらえた。

 流動的なのは、週末のPFLの結果にもよるという。
「人気が無い。前回のPFLのPPVが8千件しか売れていないと聞いた。今回のリーグ戦ファイナルの6大タイトルマッチがどれだけ売れるか」と、『PFL 10: 2023 PFL World Championship』メインカードのESPN PPV等の売れ行き次第では、本体のテコ入れが必要となる可能性を語る。
 この日の大会では、現Bellatorフェザー級王者のパトリシオ・ピットブル・フレイレが、PFLフェザー級決勝を制したヘスス・ピネドと、Bellatorウェルター級王者のジェイソン・ジャクソンが、PFL同級優勝のマゴメド・マゴメドケリモフと、それぞれフェイスオフを行っている。
 各階級の「チャンピオンvs.チャンピオン」は、どこでどのように行われるか。今回の買収劇も含め、そこには“サウジマネー”がからんでいると榊原CEOは明かす。

「先日のタイソン・フューリーとフランシス・ガヌーのPPVも全然売れていない。サウジアラビアで金を出した人は、ボブ・アラム(プロモーター)に『二度と来るな』という状況だったようで、大損ですよ。今回のPFLもサウジの金なので、サウジはほんとうに“ホット”なんですけど、そういう人たちを納得させる結果が出るかどうか。6大タイトルマッチの結果次第で僕らとの向き合いも変わると思う」(榊原CEO)
 アメリカに次ぐ産油国であるサウジアラビアは、戦時下のロシアの原油供給問題のなかで、貿易黒字額を伸ばしている。そんななか、国家プロジェクトとして政府主導で対外ビジネスへの巨額投資を開始しており、そこにスポーツが含まれている。サッカー、ゴルフ、テニス、競馬、そして格闘技。オイルマネーをスポーツ投資により良いイメージにする効果も期待されている。その状況はRIZINが大会を開催したアゼルバイジャンにおいても同様だ。
 そのサウジアラビアで、GAE(General Authority for Entertainment)=総合エンターテインメント局で議長を務めているのがトゥルキ・アラルシクだ。スペインのサッカークラブ、UDアルメリアのオーナーで、サウジ王室顧問でもある彼は、フューリーvs.ガヌーのブッキングを務め、2024年2月17日にサウジアラビアの首都リヤドで行われるフューリーとオレクサンドル・ウシクの4団体統一戦の仲介も務めている。

 しかし、米国でESPN+、英国のTNTスポーツで放送されたフューリーvs.ガヌーのPPVは、79.99ドル(約1万2千円)と高額な上に、通常のPPVの時間帯から外れていたこともあり、購入件数は10万件に満たない「低い」数字にとどまったことが報じられている。
 そのガヌーと5月に契約を結んでいるPFLにも、サウジマネーは投資されており、今回のPFL2023ファイナルがどのように評価されたか。

 デイヴィス会長は、「スコット・コーカーとマイク・コーガンが会社に残り、Bellatorの新たなビジョンを運営する手助けをしてくれることを願っている」と語っていたが、その後の状況はどうか。
 本誌の取材に榊原CEOは、「米国でスコットとも会いました。結局、オペレーションを誰がやるか。ドンさんは会社経営のマネージメントのスペシャリストだと思いますが、格闘技のコンテンツをこれまでもこれからも実績のある人がやれるのか。スコットが抜けてコーガンがやるのか、スコットもコーガンも抜けるのか、そこは僕らもどうかなと」と、注視していることを語っている。
 危惧しているのは、PRIDEを買収したときのUFCの二の舞だ。

「PFLのチームが兼任して(Bellatorも)やると、UFCとPRIDEのときのようになっちゃう。“PFLだけやっておけばいいじゃん”と。そうするとBellatorの契約をPFLにがっちゃんこして、もう買ったものだから何か使おうとなるかもしれない。ちょっと様子を少し見ておく必要はあるなと思います」と、榊原CEOは続けた。

 前述の通り、PFL版Bellatorは、2024年に8大会を開催する。その最後を飾るのは、大晦日、日本大会となるか。

 デイビス会長はPFL2023ファイナルでのドレーク・リッグス記者の取材に、RIZINとのパートナーシップを維持することについて話し合ったことを明かし、「もし一緒に何かをするとしたら、それは来年の終わりになるだろう」と語っている。
 それに呼応するように、榊原CEOも「PFLと友好関係はあるので、日本のファンが喜んでくれることができればなと思います」と結んでいる。(ゴング 格闘技)